二度目のトマトの栽培

 このところ、ずうっと雨。
 雨ばっかり。
 近くの百貨店から一週間の催事の告知葉書が届いていたので見に行きた
いが、豪雨だったり、爆音と共に雷が鳴りまくったりする毎日で、なかな
か出かけられない。
 が、雨雲レーダーと天気予報を見て、今から三時間ぐらいは雨は降らな
さそうだと思えた時に家を出た。
 背中にリュック。
 リュックは晴れの日しか選ばないんだけど。
 なんとなく、両手を空けておいた方がいいという予感に屈したのだ。
 百貨店に到着。
 催事をやっていない・・・。
 目当ての催事は翌週からだった。
 鈍くさいなあ、私。
 店内の夏のセールを見て回り、花売り場に行ったら、トマトと茄子の鉢
植えが出ている。
 トマトには苦い思い出がある。
 初めて挑戦した時、深いプランターに苗を植え、支柱を立て、順調に成
長してくれていたのに、突然、枯れた。
 インターネットの動画で学べる環境にない頃だったという言い訳はある
けれど、読んで知った「脇芽を摘む」というのをやった直後だったので、
脇芽ではないのを摘んだのか、使ったはさみが清潔でなかったのか。
 なんにせよ、トマトは枯れ、私は失意に沈んだ。
「トマト、きゅうり、茄子は簡単やけどなあ・・・」
 毎年、園児に育てさせている保育園の園長の友達は、どうやったら失敗
できるのかと素朴な疑問を口にしたが、私だって同じ思いだ。
 でも、実際、私は失敗したわけで、これ以降、私は野菜作りを封印した。
 先日、道に玄関が接している家の軒先にミニトマトの青い実を見かける
と、こんなに雑っぽくっても、ちゃんと育ってる、と思った。
 少し悲しい。
 封印したのに、なぜ気になる。
 百貨店で見て、立ち止まったのも、やっぱり気になったからだ。
 これはもう、本当にきっちりけりを付けておくべきではないか。
 嬉しいことに、百貨店に出ているのはすべて半額。野菜を初めて扱うの
で、花屋のオーナーがそう決めたらしい。
 おかげで失敗してもいいと思える金額だし、数種類あるトマトの大きい
実も小さいのも黄緑色の実が成っていて、ここから収穫できない事態にな
ることはあり得ない。
 この状態からでは自分が育てたという感覚は持てない。
 けど、一度の失敗で臆病になっているのだから、自信を取り戻すのが先
決だろう。
 そう考えて、ひと鉢購入。
 一メートルほどの高さの鉢植えを両手で抱えて帰る時、雨の不安もある
のに私にリュックを選ばせた直感を、すごいと思った。