今年のシクラメン

 初めてシクラメンを買ったのは三年前、年明けに半額になった一鉢だった。
 今なら半額でも高すぎるとわかるほど花数が少なかったが、それでよかっ
た。
 あとどれだけ咲いてくれるかではなく、その球根から次のシーズンにたく
さん花を咲かせる、ということに気持ちが向かっていたからだ。
 もっとも、白と紫のグラデーションという色合いに惚れたのではあった。
 球根は夏越しできる状態ではなかった。
 冬が巡ってくると、私はいち早く一鉢買った。毎年買うことに方針転換し
たのだ。
 白とピンクのグラデーション。
 そうか、私はべたっと一色は好きじゃないんだな。
 でも、縁はフリルみたいひらひらしている。
 買う気がなくて見ていた時はこういうのは好きじゃないと思っていたのに、
買うとなったら別にいいんだ。私は色の方が優先なんだな。
 真剣に選ぶ時こそ、本当の好みが自覚できることになる。
 この年のシーズン終わりにミニシクラメンの安売りを三鉢買ったが、花壇
用と言いたいぐらい花が小さく、鉢も小さかったので、シクラメンの数には
入れない。
 さて今年の冬。
 冬と言うにはまだ早い十一月にシクラメンが並んだのは、懇意にしている
店員がいる花屋だった。
 買うならこのグラデーションのだと意見が一致。一鉢しかない。
 ただ、花の茎が細すぎ、花を取り囲む葉は綺麗な半球を形作っていて、こ
ういうシクラメンは初めてだし、長く咲いてくれるのか。
 そこを悩んだが、買った。
 十二月に入ると、どの店にもシクラメンが並ぶ。
 別の店で、大ぶりの花が見事なのが出揃うと、悩んだ。だって、二つも必
要か。
 迷いを押し切り、購入。
 寒く灰色の冬に、私の気持ちを引き立て、春まで伴走してくれる花だと思
うと、財布の紐が緩んだのだ。
 ピンクの濃淡で、やっぱりグラデーション。
 しかし、クリスマスは赤と緑ではなかろうか。
 そんな口実で、花は大ぶりだが、鉢が小さい分、値段が安いのを買った。
合計三つ。
 いくら好きでも、多すぎないか。
 手に入れた物では満足できず、まだほしい、もっとほしいと心が動く。
 これはもう趣味だな。
 毎朝、日差しが花と葉に当たるよう鉢を動かすが、三つもあると結構面倒。
 それが先日来、置く位置が変わった。
 日の出がぐんと東寄りに移ったのだ。
 春到来。
 たぶん新型コロナウイルスがきっかけとなった私のシクラメン好き。
 コロナが終わっても続くだろうか。