言葉の真実

 電車の一日券を事前に買えるか聞くため駅の案内所に行き、ついでに交通
系ICカードが買えるか聞いた。
 ここでは買えないと言われたので、来月日本に来るフランス人のために、
どこで買えるか調べて伝える課題ができてしまった。
 係員から、回数券が今月末で終了になると言われた。
 私は愕然。
 理由を問うと、他社もそうなっている、と意味不明の答え。そして、回数
券に代わるカードを紹介され、ポイントが付くと言われて、私は、
「でも、割引率は悪くなるんでしょう」
 係員は困惑顔になったが、それでも、あと数日しかないけれど、今月中に
回数券を買えば、三ヶ月後の使用期限までは使えるので、今買っておくのが
お勧めだと教えてくれた。
 あっ。
 最後のあがきだが、今なら二、三枚買い置きできる。
 私の運命を司る何ものかは、そう私に気づかせたくて、このギリギリのタ
イミングを利用し、私に回数券の質問をさせたのではないか。だって、私に
は質問した記憶がない。これはもう、無意識のうちに質問していたとしか考
えられないのだ。
 家でホームページを見たら、回数券廃止の納得いく説明が載っていて、や
っぱりインターネット情報の方が詳しいのか。
 だが、薬剤師との会話を思い出す。
 その薬剤師の説明は、私がインターネットや雑誌や本で得た知識を裏付け
する内容だったので、私のこの理解であっていますよねと確認したら、間違
ってはいないが、すべての人に当てはまるわけではない、と当てはまらない
場合を教えてくれた。
 それは万人向けの情報では言及されない内容だった。でも、専門家なら、
たぶん、言わずもがなのこと。
 と言うことは、やっぱり、人から直接聞く方が内容が深くなるのか。
 友人達と外食した。
 カウンター越しに、私だけ、いっとき店員と雑談した際、私があの有名店
がテレビで紹介されていたと言ったら、
「その店は老舗と言われているけど、実は市場の人間に仕込みをさせている
という話なんですよ」
 と言われた。
 店のジャンルが違うので、老舗の足を引っ張りたい意図はないはず。
 店の評判だけで信用しないように、と忠告してくれたのだろう。
 で、この情報。
 知って、私は得をしただろうか。
 確かなのは、店員が信じる考えが言葉になって現われたということであり、
それを私が信じたとすれば、私の感情が、語られた言葉を真実だと判断した、
というだけのこと。
 損得がわかるのは、そのあと。
 だが、その判断もまた、私の感情次第になる。