髪型

 髪とか、もうちょっとなんとかしたら、と職場の人に言われ、
「でも、湯シャンをやめて、美容院で買ったシャンプーとリンスを使ってい
るんですよ」
 と私が応じたのは、癖毛なのでパーマはいらず、髪が傷むことはないけれ
ど、髪の毛が細すぎて少しの風でもふわっと広がるので、ちゃんと手入れし
ていないように見られたのかと思ったからだ。
 シャンプー、リンスを変えても髪はパサつき、湯で洗い流すだけの湯シャ
ンなら必要な脂分は残っていいのでは、と湯シャンに切り換えて久しいが、
先日、美容院で髪を切ってもらった時に髪の毛の根元に皮脂が詰まると良く
ないという話になり、私の髪はと聞くと、まだ大丈夫と言われ、その「まだ」
が気になり、その店で売っているのを試してみることにした。
 三種類あるシャンプーの効果を聞いて迷っていると、松竹梅の竹に当たる
値段のをまず試してみてはと言われ、値段を考えなければどれを勧めるかと
訊ねると一番高いのを言われたので、それにした。リンスも。
 どちらもカット料金より高かったが、使ったら、即、髪のパサつきが収ま
り、なーんだ、シャンプーとリンスの問題だったの。
 なので、髪のことを言われた私はこの顛末を説明。
 すると、私の髪の毛がパサついていると思ったことはないと言われ、髪を
まとめてイヤリングを付けたらいいと思うと言葉が続いた。
 職場に着いてすぐ、鏡も見ず、無造作に後ろ手に髪を上げることがあるが、
その髪型がいいと言われて、素直に喜べるだろうか。
 だが、そう言えば、髪の自重で少しでも広がるのを防ごうと続けてきたロ
ングヘアは乾かすのに時間がかかって面倒で、首の下ぐらいまで切ってから、
私的な事も話す職場の人に意見を乞うと、
「髪の毛を上げるのも好きだったけど」
 と言われたのだったなあ。
 丸顔の私にシニョンが似合うと言う人達がいる。
 そして、イヤリング。
「絶対合うと思う」
 私に強くそう言った人からは実は他のことでも言われていることがあり、
それも聞かぬこれも聞かぬではまずいかと、髪をアップにし、イヤリングを
し、頬紅を差して行ったら、
「うわぁ、可愛い。やっぱり思った通り、素敵よ、菊さん」
 大げさすぎる褒め言葉には要注意。
 そうやって相手を良い気分にさせ、自分の思い通りに操る、というのは有
効な手段だから。
 私は慎ましく微笑んだ。
 ところで頬紅だが、幾つか持っているだけだったのが、再び使う日が来た
のであった。