アジアのテレビドラマ

 今日は二度寝し、起きたら八時四十分。
 平日なら間に合っていなかった。
 以前はテレビの情報番組を聞き流していたが、面白くなくて、チャンネル
を回したら、中国ドラマの『陳情令』で、一瞬にして引き込まれ、以来、八
時半からはテレビドラマを見る時間になったのだ。
 今は韓国ドラマの『トンイ』をやっている。
 王宮のセットは作り物めいて、やや興ざめ。話の筋も、覇権争いや裏切り、
嫉妬など、ドラマの定番を時代や場所を変えて見せられているだけ、と思わ
ないでもない。
 それでも見ているのは、出演者の演技に、チャンネルを変えたくなるよう
な痛ましさがないからだろう。
 筋書きは極上、出演者の演技も見事で、私の中で『陳情令』と双璧を為す
のは、九時半から放送の韓国ドラマ『ポッサム』だった。
 今週で終わってくれてよかった。
 そのあとの新ドラマには興味を惹かれなかったので、九時半からは自由な
時間が戻ってきたのだ。
 ところで、ドラマの中で男も女もよく泣く。
 日本では目薬を使うと読んだか聞いた記憶があり、同じなのだと思ってい
たが、本物の涙が流れているようにしか見えない。
 涙も演技のうちなのか。
 私は、『ポッサム』で心揺さぶられる場面が来ると、その気持ちをさらに
高ぶらせて、泣こうとしてみた。
 成功することはある。
 でも、表情を変えずに涙をツツーッと流すことができない。
 やっぱりプロはすごいんだなあ。
 日本の古い時代劇のドラマを再放送しているようなので、ちらっと見たら、
やっぱり善が悪を成敗する物語。
 中国や韓国の場合も最終的にはそうなるとしても、一直線にはそうならな
い。悪の側は策を弄して権力を奪おうと立ち回るし、善の側は悪の言い分を
受け容れるしかなくなることが起こるし、背信も。人は我が身可愛さで行動
する、という道理に則ったせめぎ合いが幾重にも積み重なって話が展開する。
が、悪の中にも善あり、逆も然り、という人間らしさも加わるから、話が一
層複雑になる。
 こういうドラマを見て育っていたら、正しければ勝つ、なんて青臭いこと
を胸を張って言うだけの幼い精神からもっと早く卒業できていた気はする。
 ただ、どれも結構長編で、全五十話ともなれば、途中で過去の話の内容を
思い出せなくなるのが困りもの。
 けど、実生活でも、思い出せるのは大きな出来事だけ。
 大半は忘れてしまう。
 だからいいのか。
 ドラマは夢。
 私の人生も夢、みたいなもの。