テレビのリモコン

 レーザープリンターのトナーが急遽必要になった時、近くの店舗から取り
寄せて、その日中に私に購入させてくれた店が、テレビのリモコンの時は私
に二度手間を取らせた。
 これが後継になる、と見せてくれたリモコンは、でも、すべてのボタンが
私のテレビと連動するかはわからないと言い、それでもいいと言っても、売
り渋る。
 不満だが、これこそ客への誠実さだとわかるから、諦め、それまでどおり、
リモコンボタンの上下の矢印を押して選局する方法に舞い戻った。
 これでも用を為すので慌ててリモコンを買い換えずにいたら、ずるずる月
日が経ち、指は、選局はこの方法、と覚えてしまっている。
 でも、たまにイラッ。
 見たいチャンネルの数字ボタンを押すのと比べると、今このチャンネルが
映っているから、上向きの矢印を押して、また押して・・・と画面が切り替
わるのを見ながら考えることを強いられるのが煩わしい。
 テレビを買い換えたら。
 値段が高い。
 パソコン関連なら高くても甘んじるのに、テレビはそうできないというの
は、私の中でテレビはその程度の存在、ということなのだろう。
 それに、使っていないテレビがあるから、それと交替すればいい。
 じゃあ、このテレビはどうする。
 廃棄か。
 リモコンのせいでテレビを廃棄するのか。
 もったいないなあ。
 ここに至り、ようやくメーカーに問い合わせてみたらどうだろう、と閃い
た。
 メーカーの回答を聞いたあとなら、迷いは消える。
 この時は、なぜか電話で問い合わせた。
 すると、リモコンが本当に壊れたのかをまずは確認させてほしいと言われ、
「えっ」
 私は心がつんのめる。
 渋々、言われたボタン操作をしたら、やっぱり修理か買い換えだと言われ、
だから私がそう言ったじゃない、と心の中で私。
 だが、本当に壊れたのか確認してから、というのはメーカーとしては順当
なる対応だろう。
 買い換えを望んだら、今度はすぐに後継の品番を教えてくれた。
 件(くだん)の店で取り寄せてもらい、一件落着。
 だが、私は幻惑されていた。
 品番は私のリモコンとまったく同じで、私は、持っていたのとそっくりそ
のままの新品を手に入れたのだ。
 なぜ、一度目で買えなかったのか。
 店で扱うには値段が安すぎ、取扱い品番リストにもないとなったら、店は、
そのリモコンの製造は終わったと判断しても仕方ないだろう。
 なんにせよ、今は快適。
 ただ、指は矢印ボタンで選局したがる。