radiko

 私にとって、ラジオがこの世に存在しない物になったのは、引っ越し
てきた十年前に遡る。 
フランス人が話すフランス語を聞きたくてNHKラジオのフランス語
講座を思いつくが、私の部屋ではラジオが聴けない。
 リビングでは聴ける。
 建物と建物の位置関係から、ラジオの電波が届かなくなる場所ができ
る場合があるが、日本国内には結構そういう箇所が多く、密かに問題な
のだとか。ひとたび大災害にでもなれば、ラジオこそが情報入手の最強
手段になるからだ。
 なるほど。
 けど、受動的「ラジオ難民」の立場では、どうすることもできませぬ。
 結局、フランス語講座の時間にわざわざリビングに行くのは面倒で、
以来、ラジオは「あるけど、ない」ことにした。
 そんな私は、インターネットで海外のニュースを視聴する方向に進む。
 VTR放送になるけど、公開までに二日も三日もかかるわけではない
ので、十分早い情報と言っていいだろう。
 恐るべし。いや、ありがたし、インターネット。
 それでも、ヨーロッパ以外の国では聴けないというサイトはまだ存在
した。
 それがここに来て加速度的に状況が整ったようで、ラジオなら、イギ
リスのBBCやフランスのrfiは生放送が受信できるらしい。
 BBCは「listen live」を選ぶ。
 rfiは「今、何時になりました」と告げる時刻が「生」とみなすし
かない時刻。
 それでも、「らしい」とあやうやな表現になる私。
 住んでいる国のラジオから見放されているのに、たとえVTRでも、
ヨーロッパというかくも遠き国のラジオが普通に受信できるのが驚きだ
し、もし本当に生放送ということになったら、半信半疑になっても当然
ではないか。
 ところで、私がradikoに到達することになったのは、先日、フランス
人を連れてカラオケに行き、彼女のために選ぶ童謡以外の、まともなは
やり歌も歌いたい、と強く思ったのがきっかけ。
 同行してくれた日本人の友に、
「なんで、いろいろ歌を知ってるの」
 と聞いたら、
「うちは、朝はFM802なの」。
 時代は進んでいるはずだし、そろそろネットでラジオが聴けるのでは、
と期待したら、radikoが見つかった。
 早速、帰国したフランス人にもURLを送信。
 しかし、これもYouTube同様、「聴けない」と返事が返ってきた。
 ただ、radikoは民放ラジオ局による八月までの試験配信だと知った
ので、聴けない理由はそれだろう。
 うーん。それにしても、まだ「試験」状態なのか。日本は。