占い

 私は趣味で占いをする。
 星占い、姓名判断、四柱推命、算命学・・・。
 まずは自分自身を実験台に検証するも、検体がひとつでは少なすぎる。
 友人知人にデータを乞い、地道な検証作業を経て、一応、各種占いの
良い所取り結果を出せるところまで漕ぎ着けた。
 それで満足して、占いとは疎遠になっていたが、久しぶりに大学時代
の同級生男子と再会することになり、事前に、生まれた場所と年月日時
間を教えてもらった。
 彼は、ちょうど会社を辞めてすぐの時で、次の仕事を探さなくては、
という状況だと言うので、占いで彼の運気を見、ついでに彼の性格判断
もしてみよう、と思いついたのだ。
 彼は占いを信じていなかった。
 が、名誉欲や出世欲はない、デスクワークは向かないと私が言うと、
「そうやねん」
 と頷いて、会社を辞めることにした理由を話してくれるし、占い結果
に頷くたびに自分の内面を告白してくれるのは感慨深かった。
 それにしても、女の人に可愛がられる、束縛されるのが嫌い、お金に
きびしい、何もないのに事件を起こそうと思わない、嫌なことには黙っ
て耐える、一見おとなしいが結局自分の思いどおりにする、読書や芸術
鑑賞など知的な楽しみを好む、プライドが高い、等々、どれも、私の知
る彼と結びつかない内容なので、当たっていると言われて、びっくり。
 彼は、全体の七十パーセントは当たっている、と驚いていた。
「占いって、捨てたもンと違うんやなあ」
 そうでしょう。
 でも、五万とある中から信用できそうなのを抽出してきた私の「腕」
のおかげもあるかもよ。私は心の中で呟く。
 ほんと、難しいのは膨大な中からどれを選ぶかなのだ。
 卑近な例でいくと、姓名判断は、旧字体新字体の二つある漢字の場
合、どちらで占うかで、結果が大きく異なる。
 あと、分析結果は同じでも、そのデータをどう読み解くか。つまり、
どういう言葉で語るか。
 相手の反応を見て、相手に伝わる言葉を選ぶという芸当も必要だろう
が、その前に、語る自分自身の語彙というものがある。
 通じる、通じないが生まれる理由なんだろうな。
 私は、占いは遊びなので、あくまで信用できると見た人の言葉をまる
ごと受け売りするのみ。
 だから、どの解説を選ぶかが重要になってくる。
 話は飛ぶが、心理カウンセラー・心屋仁之助の
「損してもいい」
 という言葉である。
 彼がブログにしつこく書くこの言葉を、私はずっと理解できずにいた。
 彼は、この言葉で何を伝えたいのか。
 私はわかりたかった。