旅のわくわく

遠方の友から連絡が来た。 優に十年以上会っていない友。 好きな音楽バンドのツアー公演を見に来るそうで、一泊するから、その翌日、付き合ってくれないかと言われる。 もちろん。 で、一日目はどうするの。 全国旅行支援の対象になるためにはほぼ始発の新幹…

薬局での話

私は、処方箋は、クリニックからファックスで薬局に送ってもらう。私が薬局に着くまでに処方箋を出す人がいたら、その分だけ私の番が遅くなるからだ。 薬局では番号札を取らないので、受付でどのぐらい待つか聞く。 先日は、すぐにできると言われ、ほどなく…

建国記念の日

今日は三月並みの暖かさになるという天気予報が信じられそうな朝の空気だったので、診察してもらいに行った。患者の多い土曜日に少しでも待ち時間を短くしたい私は受付終了間際を狙って駆け込む戦略。 ところが、診療所が集まった建物の一角が暗い。入り口に…

自分の感覚

歯医者に早めに着いたので、受付横の歯ブラシのコーナーで見本を手に取った。 いつも、歯のメンテナンスのあと、歯科衛生士が新しい歯ブラシを使って歯の磨き方を指導してくれたあと、その歯ブラシをくれるのだが、次の時までにもう一本必要になったらスーパ…

列車非常停止ボタン

きのうは早く帰りたかった。 十年に一度の寒波に襲われた水曜日もやっぱり早く帰りたかったが、私が乗り換える列車の本線で人身事故が発生して全線停止になり、そうでなくても雪で列車の運行が乱れていて、別の鉄道に乗り換えて、ちゃんと帰れるのかと雪の深…

Messenger メッセンジャー

先週、フランスの友人と電話したら、私を紹介してほしいと頼まれたと言う。 彼女は、観光がてら歩く会に時折参加している。誰かがその日に歩くルートをインターネットに上げると、参加したい人が集合場所に集まるのだ。彼女は、その時初めて出会った人と歩き…

ネグリジェ

同じ物が、昔は「お匙」だったが、今は「スプーン」。 外来語が日本語に取って代わられた一例である。 ただ、「さじ加減」という言葉の中に「匙」はしっかり生きている。 日本語同士だと、たとえば「辞書」。昔は「字引」だったが、これも「生き字引」という…

直売市

年賀状を投函した帰り、駅前に直売市が立っていたので、のぞいた。 蓮根(れんこん)が、水の入ったビニールの中でちゃぷちゃぷ揺れているを見るのは初めて。 横にいた高齢女性に、なぜ蓮根が水に浸かっているのだろう、と話しかけられた。 私は驚かない。驚…

湯浴み(ゆあみ)

サッカーのワールドカップで「ブラボー」を連呼した長友佑都は、帰国後、取材陣の一人に水を向けられると、苦笑いして「ブラボー」。 その場面を見た加藤浩次が言った。「カツアゲだな」 初めて聞く言葉でも、話された文脈から正しく意味を理解し、そうやっ…

小説の未来

知り合いの高校生女子に英語の質問をされて答えたが、数学のように割り切れる説明にならなかったので、調べて、次に会った時、曖昧さは残るが仕方ないと、でも今度は自信を持って説明できた。 すると、言われた。「かっけー」 こういう時に「恰好良い」とい…

八時間寝た

眠たい。あれ、おかしい。 普段はあり得ぬ八時間も熟睡して、起きたら九時という呆然を経験した今日。なのに、もう眠たい。 寒いとよく眠れるから、と言ったら、思いつきの自己弁護になりそうだが、一理あるかも。寒くなって、夜中にトイレに起きることがな…

振替輸送の夜

夜、いつもどおり電車を降り、同じホームに入ってくる特急電車を待つが、降りた電車は扉が開いたまま。 車内アナウンスが聞き取れなかったので、電車に首を突っ込んで聞くと、たった今、この路線で人身事故が起こったという。 解せないのは、慌てて外に飛び…

宝くじ

宝くじは当たらない。 宝くじの種類によって確率は変わるが、どれでも、一等の当選確率は交通事故に遭うより低いという計算結果が出ているのだったと思う。 それに、金持ちYoutuberが実際に百万円分宝くじを買い、当選額が元手の半分にも満たなかったという…

ネイルサロン

先日服を買ったら、店内のネイルサロンで指のマッサージをしてもらえるという券をくれた。 急に寒くなり、指先がかさついてきたところだったので、ありがたい。 ところが、二人のうち一人だけが接客中なので近づいたら、「これから予約なんです。できれば予…

記憶の依代(よりしろ)

よりしろ。 漢字では依り代とか、依代、憑り代、憑代。 五木寛之の『捨てない生きかた』を読んだ。 その中で、彼は、モノは記憶を呼び覚ます装置で、ゆえに依代だと書いている。 モノはない方が空間が広々として快適でしょ、快適なはずでしょ、と言われたら…

断捨離は難しい

先日、岡山の産直市が立ち、葡萄を買った。『紫苑』 知らない品種だ。 でも、だから私は買ったんだと思う。 昔、葡萄は実がもっとずっと小さくて、口に入れたら唇をしっかり閉じていないと汁が弾け飛んだ。そんな葡萄が私は好きだったが、品種改良されると、…

アムウェイの友

前回、パリ在住中にフランス男からかかってきた変な電話についての思い出を書いた。 なぜ私はずるずる会話に付き合ったのか。 罪悪感だったと思う。 私達は、社会学習の結果、相手が優しく丁寧な口調だと、それに相応する態度で応じるべきであり、それからは…

ひとごと、ではない

パリに住んでいた頃、「この電話番号が当選しました」 と、まともに取り合えない電話がかかってくることがあった。 ブチッと切る。 そうできたのは録音された音声だったからだろうか。 ある日、見知らぬ男から電話がかかってきたら、私はずるずる会話を続け…

今日は「十三夜」

先ほど、カーテンを開け、窓を開けた。 不思議だ。 だって、今週火曜日には、「まだ蒸し暑い」 と友と言い合っていたが、その後、気温は急降下。昨日はついに最高気温が二十度を下回り、夜、カーテンを閉めたら、もう翌朝までカーテンも窓も開けない。 なの…

ラベンダー色のシャツ

買ったばかりの薄紫色のシャツを着て行った。 下は白のスキニーパンツ。これは夏の終わりのセールで買った。くるぶし丈がほしいとなったら、スキニーしかなかったのだ。 でも、足にぴったり沿って、履き心地が良い。それで、あろうことか色違いで三着も買っ…

英国エリザベス女王の国葬

題名だけ知っている映画は多い。 たとえば、フランスの『大人は判ってくれない』。 積極的に観る機会を作ろうとは思わないが、テレビで放映されると、観る。 監督のフランソワ・トリュフォーは、今月、ジャン=リュック・ゴダールが死ぬと、対比で取り上げら…

言葉は歯痒い

打ち合わせで、その人が、コレコレの場合は、「もう一枚白紙を渡してあげてください」 と言った。「必要な箇所にマーカーを引て渡すのもいいですね」 皆の頭の中が疑問符で埋まる。 でも、話を聞いていれば、そのうち、その人が言わんとする「白紙」の正体が…

二度目の栄養指導

二度目の栄養指導を受けた。 一度目は近くの開業医で、二年前の夏だった。 内容は、しばらくは覚えていたが、すぐに忘れた気がする。 だから、今回も、役に立つのかなあ、なんて思った。 私次第なのに不遜である。 今回は総合病院で、予約の枠はがら空き。選…

握力は筋力

医者に私の握力を聞かれ、春、測定した時の記憶を思い出し、「割と良かったです」 と答えたら、何歳代の数値だったかと重ねて問われ、「三十代だったと思います」 と答えたのは、三十代か四十代だったと思うが、若い方が腕力があるはず、と若い方に賭けたの…

詰め放題

タオルの詰め放題をやっていた。 一番数が多いのは、ぺらぺらのハンドタオル。 明らかにセール品、と見えそうだが、確かにそうでも、ここまで薄いのは見たことがない。いざ、ほしい、となったら、どこにも売っていないだろう。 ビニール袋を手に取り、高齢女…

舌は筋肉

歯ぎしりと歯の食いしばり対策のマウスピース。 そのすり減り方は一様ではないので、定期的に歯医者に表面をならしてもらう。 歯垢を取るなどの歯のメンテナンスは、歯科衛生士がしてくれる。 いつも同じ人。 そのおかげ、ということはないだろう。私のカル…

新聞紙で作る箱

前回、「立秋」だが体感はまだ夏、というようなことを書いたつもりが、体感のままに手が「立夏」と書いていたと気づいたのは、数時間後。 すぐに訂正したけれど、実は、さらにもう一箇所、「ちゃんと私の視界に入っている」 と書くべきところ、「と」を抜か…

気づけば、変わる

明日は立秋。 暦の上では明日から秋。 悪い冗談、と思いかけたが、あっ。 少し前から空は高く、澄んだ青。 雲は、刷毛雲。 季節の足取りを、空はちゃんと反映している。 地表に生きる我が身が体感できていないだけ。 蝉も盛んに鳴いている。 七月に一番蝉の…

アップデートが怖い

職場で上の立場の女性から、「もう少しお洒落をしたら」 と言われた日は、汚れてもいい服で行く必要があった。 ただ、ほかの人達と比べ、私は明らかに「いけていない」服だったのかも。 そして、一度でもそういう服装をしたら、それがあなたのイメージだと他…

時が止まったクローゼット

着る服は、その人のイメージを表わす。 でも、多彩なコーディネートを心がけすぎ、たった一度でも「いけていない」服装をしたら、それがあなただと他人に記憶される。 だから、本当に似合う服を数少なく着回しして、小物で変化を付ける。 そんな記事に頷いた…